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<title>リレー小説</title>
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<description>有志で行うリレー小説です</description>
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<title>４０：づけまぐろ</title>
<description> 　触手がその形を変える少し前に、５人は準備を終えていた。　それぞれのスタイルと戦闘の経験から、自然と出来あがる陣形。サリューナとラオは最前衛で武器を構え、その後方では治療を一区切り終えた藍華が、腰に下げた鞘から刀を抜き出す。　ウィンクルムは魔法の連続行使のため、一息入れる必要があった。ケイロンと共に大きく後退する。「すみません、エストニア先生」「気にするな。敵の分析も戦闘には重要だ」　ゲルからかな
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<![CDATA[ 　触手がその形を変える少し前に、５人は準備を終えていた。<br />　それぞれのスタイルと戦闘の経験から、自然と出来あがる陣形。サリューナとラオは最前衛で武器を構え、その後方では治療を一区切り終えた藍華が、腰に下げた鞘から刀を抜き出す。<br />　ウィンクルムは魔法の連続行使のため、一息入れる必要があった。ケイロンと共に大きく後退する。<br />「すみません、エストニア先生」<br />「気にするな。敵の分析も戦闘には重要だ」<br />　ゲルからかなりの距離を取り最後方に立つ白衣の女性。その隣に並び、少年は再び集中力を高めていく。<br />「む、来るぞ」<br />　触手の群れはゲル前面から沸き立つように蠢いた後、一気に噴き出した。明らかにその動きは、先ほどの大蜥蜴の攻撃と酷似している。違うのはその触手の太さと質感。触手の一本一本が人の頭ほどの太さを持ち、透き通った緑色をしていた。<br /><br />　最前線。サリューナは迫る触手群をぎりぎりまで引きつけ、回避、攻撃に転じる機を見極めていた。<br />　触手の壁。そう言っても差支えないほどの密度で迫るゲル体の攻撃を前に、サリューナは最大限の集中を向ける。<br />　それほどまでに、ゲルの初撃は容赦なく、圧倒的だったのだ。<br />「っ！」<br />　サリューナは右前方の空間に飛び込み、身を屈めた。<br />　彼女がしゃがみ込んだのは、触手の壁の、僅かな間隙だった。霞めるほど近くを触手が伸びて行くが、彼女は無傷でこれをやり過ごしていた。同時に魔力の言葉を紡ぎ出し、反撃に転じる。<br />「我が言霊は紅蓮の華。綻び開くは赤の群れとなりて、四方に散り咲けっ！」<br />　瞬間、酒壜の栓を抜くような音と共に彼女の周囲に現れたのは、四つの赤い小球だった。小球は散開しながら、それぞれ触手の中へ消えて行く。<br /><br />　一方のラオも、ゲルの初撃をなんとか回避していた。場数ではサリューナに遠く及ばないラオが回避できたのは、先の蜥蜴との戦闘によるものが大きいのだろう。触手が蠢くや横っ跳びに飛び、攻撃の射線から体を外していたのだった。<br />　――あと少し判断が遅かったら……<br />　ゲルの体の中で金属製の右脚がぷかぷか浮いている光景を想像しかけ、ラオは頭を振った。<br />「って、マズイ！」<br />　触手を避けたということは、その後ろにしわ寄せがいくということであり、藍華はちょうどラオとサリューナの真後ろに立っていたはずだったのだ。<br />　ラオはさっきまで三人が立っていた空間を見やるが、そこは既に触手によって蹂躙されていた。藍華の姿は見当たらない。<br />　しかし、最悪の事態を想定したラオの思考は、途中で断たれた。<br />　ちょうど彼が目を向けたあたりの触手が、次々燃えていくのだ。燃えだした触手からはいくつもの火の玉が飛び出し、また次の触手に飛び込む。そうして連鎖的に広がっていく炎は、まるで花火のようだ。火の玉はあっという間に触手の群れを焼き尽くして、果てた。ゲルの燃え滓は、ブクブクと泡を立てて消えていく。<br />　すぐにラオは、陽炎の中から立ち上がるサリューナを見た。服には焦げ目すらついていない。<br />「す、すげぇ……」<br />　彼女の魔法を目の当たりにし、感嘆するラオ。それに対してサリューナは、不満げな顔をしていた。<br />「途中で触手を切り離すとはね……」<br />　未だ悠然と佇むバケツ型のゲルに、サリューナは距離を取る。<br />　代わりにラオが、ゲルの右に回り込んだ。手に即席の火炎瓶を持ち、大きく振りかぶる。元は糖蜜の入っていた瓶に、液体状の燃料を入れたものだった。<br />「てやっ！」<br />　回転しながら、ゲル体へと放物線を描き飛んで行く火炎瓶。どうも炎に弱いらしい。そう考えての行動だった。<br />　だが火炎瓶は、目標には当らなかった。<br />「いっ？！」<br />　バケツ状だったゲル体は、トンネル状に形を変えて瓶を避けたのである。<br />　だがラオの驚きは、それだけで終わらない。<br />　ゲルに空いた大きな孔の向こうには、藍華がいたのだ。あの一瞬で、触手を回避していたのだ。<br />　彼女は唐突の事態にも動じず、火炎瓶を掴み取った。そのまま下手投げでゲルに向かって瓶を放り、刀で両断する。<br />　中からは燃料が溢れ、ゲルに飛び散ると共に引火した。炎は激しくゲルを焼く。<br />　ゲルは身を悶えさせ、炎の付いた部分を飛び散らせて回避。ゲルの欠片は火炎弾の群れとなり、前線の三人を襲う。あわやラオは直撃を受けるところだった。しかしゲルのその行動により、ラオは弱点を炎だと確信した。懐の固形燃料に火を点けようと、簡易着火器を取り出す。<br /><br /><br />　その時だった。<br /><br /><br />　ケイロンの叫び声が部屋内に響いた。<br />「離れろ、その一帯から！」<br />　次の瞬間、緑色だったゲルが青色に変化する。流動性のあったゲル表面の質感は俄かに堅さを増していた。<br />　ラオはそこで初めて思い至る。炎に焼かれたゲルの滓から、ブクブクと立ち昇っていたものの正体を。<br />　ゲルの天辺から、一つの欠片が飛び出した。黄褐色をした液体だった。<br />　その黄褐色の欠片は、白煙を伴いながら天井付近にまで上昇。ガスに引火し、大爆発を引き起こした。 <br /><br /><br /><br /><p align="center"><a href="http://underpneuma.blog60.fc2.com/blog-entry-119.html#jumpx">[ *&nbsp;BACK ]</a>　／　<a href="http://underpneuma.blog60.fc2.com/blog-entry-121.html#jumpy">[ *&nbsp;NEXT ]</a></p> ]]>
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<dc:subject>地沃国『忘却の大都攻略編』</dc:subject>
<dc:date>2009-10-16T06:26:24+09:00</dc:date>
<dc:creator>未熟者同盟</dc:creator>
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<title>３９：道化者</title>
<description> 　背に刻まれた裂傷は深い。巨鳥の鉤爪を完全な不意打ちの形で直に受け、皮肉を根こそぎ削がれた部位。滑つくような血色で染まり、抉れ散った内肉の断面からは切断された神経筋すら覗く。　一度はサリューナによって応急処置的に癒されたものの、ゲル体に汚染され再来した巨鳥の戦いで、治癒部は二度目の開口を迎えてしまった。緩やかに流れ出る鮮血は白い肌を汚し、若干に乾いて赤黒く変色していた血塊を、その上から新たに染め上
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<![CDATA[ 　背に刻まれた裂傷は深い。巨鳥の鉤爪を完全な不意打ちの形で直に受け、皮肉を根こそぎ削がれた部位。滑つくような血色で染まり、抉れ散った内肉の断面からは切断された神経筋すら覗く。<br />　一度はサリューナによって応急処置的に癒されたものの、ゲル体に汚染され再来した巨鳥の戦いで、治癒部は二度目の開口を迎えてしまった。緩やかに流れ出る鮮血は白い肌を汚し、若干に乾いて赤黒く変色していた血塊を、その上から新たに染め上げている。しかも途中で雑菌の類が傷口より侵入していたのだろう。大きく捲れ上がった筋肉の内側は青紫色へ変じ、黴のような黒斑を浮かばせた。<br />　素人目に見ても重傷に及ぶ傷だ。水の加護を得た回復魔法で治療へ当たるウィンクルムは、彼女の凄愴な背中を直視しながら内心で焦りを募らせている。サリューナよりも魔力の強いウィンクルムだが、彼の治癒能力とて万能ではない。藍華の背に穿たれた傷を完全に塞ぐ事は出来ないし、不気味な斑点を即座に取り除く事もやはり出来ない。<br />　言ってしまえば、これは手遅れの傷。彼が魔力を振り絞って挑んだとて、完治は到底不可能である。精々がこれ以上の損壊拡大を防ぎ、多少マシという状態まで持っていった後、そこから現状維持とするぐらいだ。<br />　かような状況にある少女を苛む痛覚は、如何程のものだろうか。恐らく今こうしている間ですら、継続的な激痛が彼女の心身を蝕んでいる筈。動く事はおろか、立つ事さえ出来かねる程の重苦が全身を駆け巡っていて然るべきである。<br />　にも拘らず、藍華はそんな様子をおくびにも出さない。平然と其処に在り、あまつさえ笑ってみせる。そんな彼女へウィンクルムが抱いたのは、尊敬や感銘。などという感情ではない。<br />　戦慄である。頭で考えるのでなく、根源的な部分へ及ぶ本能からの畏怖。少年は治癒魔法を使いながら、この少女へ脅えに近い感情を抱かずにはおられなかった。<br />　精神を掻き乱し、まとな思考さえ許さぬ程の猛痛を感じながら、表に出さぬのみならず自我を悠然と確立し続ける気概、胆力。それはもはや強靭や卓越と呼べるレベルではない。異常、異様、異形の領分だ。まともな人間、否、まともな生命体ならこうはいかない。仮にこれを精神力で抑え込んでいるのならば、尚の事、常軌を逸している。そこまで研ぎ澄まされた精神は、強健と呼び讃えられるものでなし。良識的な段階を遥かに超えてしまっている。そんなものは狂っているのと大差ないではないか。<br />　姿形は可憐な乙女。だがその内側に在るのは、狂常の獣。藍華とはそういう娘だ。彼女の抱く深淵を間接的に垣間見るウィンクルムは、正体無き恐怖に我知らず身震いした。彼自身が藍華を恐れたのではない。彼の意識は少女を否定的に見ていない。ただもっと深い、理性や知性が至らぬ原初の感覚が、本能的な怯えを胸の内に小さく灯した。そては蝋燭火のように小さく、些細で、儚い、けれど明確に過ぎる違和感。<br /><br />　地を揺する震動に全員が身構えたのは、談笑の最中。何の前触れもなく始まった地鳴りは、地下空間全体を捕える程の大きさ。床や壁や天井、周辺建材へ至るまで全てをまとめて揺るがす力に、無視出来からざる悪意を感じたのは誰が最初だったろう。<br />　止まる事のない巨震の世界へ、張り詰められていく緊張。同時に染み渡る戦意が、遺跡への侵入者達に各々得物を構えさす。各員が何者かの接近を気配に取った時、震動の停止と炸裂する衝撃が折り重なって空間を満たした。<br />　通路を閉ざす壁の一つが粉砕され、無数の瓦礫を迸らせて現われたるモノ。飛来する硬片を器用に躱していく全員の視線は、揃って乱入者を射抜き見る。五対の瞳が捉える姿は、高らかに聳える緑の巨体だった。<br />　見たままを率直に表すならば、それはカップに入ったゼリーを逆さまにして皿へ移したようなもの。目鼻耳口、顔が無ければ手足もない。翼や尻尾の類もない。鱗や外皮も甲殻もない。ブヨブヨとした弾力を全体に持つ、あまりに巨大なゲルの塊。<br />　濃緑の半透明体が揺れ動きつつ、鈍重な身を前進させてくる様は不気味の一言だ。あたかもナメクジが這いずった後のように、巨大ゲルの進行路は緑の粘液で汚れている。それだけでなく、粘液体がこびり付いた壁の破片は、白煙を上げて溶解していくではないか。<br />　ここにきて冒険者達は理解した。この弩級ゲルこそが、ラオや藍華達を襲撃していた怪物の正体。既に死んでいるような害獣の骸へと潜り込み、内部から操って少年等を襲った、あのゲル状物体の本体なのだと。<br />　無数のゲルが集ってこの巨体を形成しているのか、はたまた巨大ゲルから分化した端末達が屍骸へ入り込んでいたのか。その辺りの詳しい事は判らないが、何にせよコレこそがゲルの元締めである事は確実と思われる。<br />「あれは！」<br />　気味の悪い大型ゲルを睨む藍華は、その体内へ目を凝らした。彼女が見付けた物、それは緑の巨体内へ浮く数枚の金属カード。間違いようもない、遺跡調査隊の身分証明章である。<br />「コイツが調査隊を全滅させたのね。全員取り込んだけど、あのカードだけ消化出来なかったんだわ」<br />　刃を握り直し、怪生物の全容を眺める藍華。緑の厚壁内で漂う証明章は、ゲルの動きに合わせて上下へ揺れた。<br />　規格外の巨大ゲルは五つの生命反応を前に体を波打たせると、前面を変形させ多数の触手を作り出す。粘性の緑が激しく蠢き、肉感的な管ってなって襲い掛かってきた。 <br /><br /><br /><br /><p align="center"><a href="http://underpneuma.blog60.fc2.com/blog-entry-118.html#jumpx">[ *&nbsp;BACK ]</a>　／　<a href="http://underpneuma.blog60.fc2.com/blog-entry-120.html#jumpy">[ *&nbsp;NEXT ]</a></p> ]]>
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<dc:subject>地沃国『忘却の大都攻略編』</dc:subject>
<dc:date>2009-09-27T12:15:07+09:00</dc:date>
<dc:creator>未熟者同盟</dc:creator>
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<title>３８：づけまぐろ</title>
<description> 　一団は藍華の治癒を待ちながら、持ち寄った情報の整理に取り掛かっていた。　調査隊の言葉をサリューナが伝え終えたところで、ラオが反応した。彼は床に座り込み、丸い団子をつまみながら話を聞いていた。　その団子は保存性に優れる代わりに粉っぽく硬い。糖蜜に漬けることで、味と水分を補いながら食べるのが工房の通例だった。もてなしのルールに沿って団子を皆に分け与えていたラオだったが、そのほとんどが、あまりの甘さに
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<![CDATA[ 　一団は藍華の治癒を待ちながら、持ち寄った情報の整理に取り掛かっていた。<br />　調査隊の言葉をサリューナが伝え終えたところで、ラオが反応した。彼は床に座り込み、丸い団子をつまみながら話を聞いていた。<br />　その団子は保存性に優れる代わりに粉っぽく硬い。糖蜜に漬けることで、味と水分を補いながら食べるのが工房の通例だった。もてなしのルールに沿って団子を皆に分け与えていたラオだったが、そのほとんどが、あまりの甘さに閉口していたことは知らなかった。<br />「つまり、一応目的は果たしたんだよ、な？」<br />　ラオの言葉に、未だ治療中の藍華が答える。<br />「いいえ、まだよ。他のメンバーの身分証も手に入れなければ、完璧に依頼をこなしたことにはならないわ」<br />　少女の返答に対して、少年は感嘆のため息とともに頷いた。<br />「はぁー、なるほど。完璧主義なんだな、藍華は。……もしかして"エー"型？」<br />　藍華はラオの言葉に、無垢な少女として少々困惑しながらも微笑む、という素振りを見せる。<br />　彼女の反応に、今度はラオが困る番だった。お互い首をひねるその光景に、水筒を傾けていたサリューナは危うく吹き出すところだった。<br />　様子を見かねたケイロンが助け舟を出す。彼女は少し離れた場所で、煙を燻らしていた。<br />「君が言うのは、細胞の特徴を本人の性格に結びつける……まあ、一種の仮説だろう。外側の国で聞くことはほとんどないが」<br />　ケイロンの的確な補足を受け、ようやく合点がいったようだ。ラオは大きく頷く。<br />　一方の藍華は、先程から治療に専念するウィンクルムに話し掛けた。見る者の心を奪うような、それでいてさりげない笑顔を見せながら。<br /><br />「ウィン、あなたは私のこと、どう思う？」<br /><br />「え、え？」<br />　会話の流れが聞こえないほどに集中していたウィンクルムには、突飛な質問だったろう。そして人によっては、違う意味を持つ質問ですらあった。ラオは若干の野次馬根性で持って、後者の展開にも期待をかけていた。<br />　ラオのような思考を経た訳ではないものの、サリューナも藍華の質問に潜む意味には気が付いていた。そしてウィンクルムの返答に、もしかしたらという期待をかけてもいた。<br />　――ウィンの注意が藍華ちゃんに移れば、二人とも、いえ、三人とも上手く行くのよね<br />　そんな考えが、彼女の頭に去来していたのだ。<br />　――でも、多分……上手く行かないでしょうね<br />　藍華の笑顔を直視したウィンクルムは知らず顔を赤らめ、答えに窮する。<br />　周囲の視線を浴びて困惑した様子のウィンクルムだったが、暫く考えた後<br />「凄く強い人、かな？」<br />　ぽつりと呟いた。<br />「そう……かしら」<br />　周囲では、ため息をつく心の声が複数。少しの間、場を沈黙が支配した。<br />「ぷっ！」<br />　肩を震わせ、笑うのはサリューナだった。それにつられてラオも笑いだす。藍華は眉を僅かに寄せ、苦笑する素振りを見せる。<br />　ウィンクルムもまた、笑い合う仲間につられ声を上げて笑った。<br /><br />　彼らのやり取りの表層と深層を、ケイロンは口の端を吊り上げ、煙草をくわえながら楽しんでいた。<br />　<br /><br />　藍華は思う。<br />　――結果としては、十分かしら。ウィンと打ち解けるためには、ね<br />　ケイロンにすら未だ十分には計れない、深い心の奥底で、彼女は笑った。 <br /><br /><br /><p align="center"><a href="http://underpneuma.blog60.fc2.com/blog-entry-117.html#jumpx">[ *&nbsp;BACK ]</a>　／　<a href="http://underpneuma.blog60.fc2.com/blog-entry-119.html#jumpy">[ *&nbsp;NEXT ]</a></p> ]]>
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<dc:subject>地沃国『忘却の大都攻略編』</dc:subject>
<dc:date>2009-09-25T12:57:42+09:00</dc:date>
<dc:creator>未熟者同盟</dc:creator>
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<title>３７：LOV</title>
<description> 　デシモテルセロは“仲間”の元へ戻ろうとしている自分が忌々しく思えると同時に、それでもやはり戻らねばなるまいと考え失笑する。「仲間だと？　オレに仲間などというモノがあるとすれば……」　それは彼を不可視の鎖で縛り付けている忌まわしいあの小娘――そんなものは見た目だけだろうが――に無理矢理に服従を誓わされている、彼と同じく人造人間（アルティフィシオン）として仮初めの生命を与えられた者たちだろう。　ところが、問
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<![CDATA[ 　デシモテルセロは“仲間”の元へ戻ろうとしている自分が忌々しく思えると同時に、それでもやはり戻らねばなるまいと考え失笑する。<br />「仲間だと？　オレに仲間などというモノがあるとすれば……」<br />　それは彼を不可視の鎖で縛り付けている忌まわしいあの小娘――そんなものは見た目だけだろうが――に無理矢理に服従を誓わされている、彼と同じく人造人間（アルティフィシオン）として仮初めの生命を与えられた者たちだろう。<br />　ところが、問題なのは誰一人として、あの小娘に反逆しようという者がいないことであった。それどころか誰もが喜々としてプリメロに使役されているのだ。<br />　ゆえにデシモテルセロは城に残っている連中に仲間意識めいたものを感じたことなど一度もなかった。むしろプリメロの走狗どもは敵も同然である。しかし……不本意ながらも先の如く、プリメロは神か悪魔かと見紛うほどの圧倒的能力を持っているため、さしものデシモテルセロも表だって敵意や害意を露わにはできない。<br />　否、プリメロに翻意を示した者が皆無だったというわけではない。デシモテルセロの他にも、いまひとり、自由を求めて逃げ出した痴れ者がいる。デシモテルセロは“それ”を捕縛するために国外に出ることを許されているのだ。<br />「……自由か……愚かな！」<br />　何かを振り払うように大声で怒鳴り、歩みを進めるデシモテルセロ。<br />「オレには死ぬ自由すら与えられてはいない！」<br /><br />『でも……生きる自由を奪った憶えはないのだけれども？』<br /><br />「生きる？　何のために生きねばならん？　オレは太古の昔に死んだのだ」<br /><br />『とても不便な考え方をするのね？　誰もが望む不死身とも言えるカラダを以て、この現世に再臨したのに？』<br /><br />「そんなものは！」<br />　デシモテルセロは自らの内に語りかけてくる幼女の声を払拭するかのように、虚空に向かって怒声を上げた。<br />「そんなものは……あの娘に呉れてやるがいい！」<br />　強く握りしめた拳から血が滴り落ちている。<br />「人外の娘よ！　それが可能ならばオレの命も呉れてやろう！　しかし……お前は何も判ってはいない……これが、この仕打ちが、どれほど冷徹で酷薄なものかを……それでも望むというのか」<br />　悪戯っぽい小さな嗤い声を伴って、澱んだ風が通路の向こう側へ抜けていく。<br /><br /><br /><br /><br /><p align="center"><a href="http://underpneuma.blog60.fc2.com/blog-entry-116.html#jumpx">[ *&nbsp;BACK ]</a>　／　<a href="http://underpneuma.blog60.fc2.com/blog-entry-118.html#jumpy">[ *&nbsp;NEXT ]</a></p> ]]>
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<dc:subject>地沃国『忘却の大都攻略編』</dc:subject>
<dc:date>2009-09-22T20:06:13+09:00</dc:date>
<dc:creator>未熟者同盟</dc:creator>
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<title>３６：cleome</title>
<description> 「ウィンはさっさと変身解いて藍華ちゃんの傷を見てあげて。応急処置はしたけど、万全じゃないから――　それから先生と……あなたは怪我は無い？」　サリューナはケイロン、次にラオへと視線を合わせ特に外傷が無い事を確認する。「私は心配無用だ」「おう、ちょっと前に落ちた時打った尻と、さっき首絞められたけど。後は擦り傷くらいだから平気だな」　ケイロンとラオの言葉にほっと息をつき、サリューナは微笑んだ。　無数の鎖と炎
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<![CDATA[ 「ウィンはさっさと変身解いて藍華ちゃんの傷を見てあげて。応急処置はしたけど、万全じゃないから――　それから先生と……あなたは怪我は無い？」<br />　サリューナはケイロン、次にラオへと視線を合わせ特に外傷が無い事を確認する。<br />「私は心配無用だ」<br />「おう、ちょっと前に落ちた時打った尻と、さっき首絞められたけど。後は擦り傷くらいだから平気だな」<br />　ケイロンとラオの言葉にほっと息をつき、サリューナは微笑んだ。<br />　無数の鎖と炎を纏った槍は、蒼銀の光の粒子に変化し、それはウィンクルムの姿へと戻っていく。<br />「藍華さん――僕のせいで大怪我を」<br />「平気よ、サリューナちゃんが治癒してくれたし」<br />　だが、藍華の傷は先程の怪鳥との戦闘で無茶をしたせいか、少し開いてしまったようだ。<br />　少量の鮮血が滲み、ゆっくりとだが彼女の服を真紅に染めている。<br />「駄目です。ほっておくと悪化します」<br />　ウィンクルムは腰に下げた革製の水筒を右手に持ち、詠唱する。<br />「我が言霊は癒しの慈雨。彷徨い傷ついた者に与える慈悲は螺旋となりて、願う者を癒さん」<br />　ウィンクルムの方がサリューナよりも魔力が強い。<br />　螺旋に渦巻き、文字を形成していく水はより複雑な文様を描いているように藍華には見えた。そして流れ込む温かい治癒の魔力も、先程より熱を持っているように感じる。<br />　藍華の重症をウィンクルムが治癒する一方では――<br />「いいってば、本当に大した傷じゃないから」<br />「ダメ！　少しでも痛みを感じたり傷を負ってるなら、これからに響くんだから大人しく手当てされなさい」<br />　断るラオを窘め、サリューナは同じように詠唱し、彼の軽傷を治癒していく。<br />　ラオの首に残っていた青紫の索条痕もすっかり姿を消し、擦り傷も治っていた。<br />　ついでに臀部の鈍痛も感じなくなったので、ラオはちょっぴり嬉しくなる。<br />「ありがとう。よし、これで動きも軽いぜ！」<br />　ラオは礼を言いつつ、軽く片足で跳ねて見せる。<br />「もうどこも痛くない？　私は少し魔力が弱いから――」<br />　すっかり元気そうなラオを琥珀色の瞳で見つめながら、サリューナは申し訳なさそうに言葉を続けた。<br />　そう、本来ならどんな小さな傷でさえ、治癒しておいた方が良い。また戦闘に突入した際に、前の負傷が足枷になる可能性も高いのだから。<br />　そして危険を省みず、ただひたすらに戦う事は得策では無い。<br />　勇気とは己が命を危険に晒し、闇雲に戦う事では無い。<br />　戦略を立て、安全を重んじる事が大切なのだ――　藍華の過去の傷跡、その戦いぶりを思い出し、サリューナは胸を痛める。<br />　自分と同い年の女性があんなに激烈な戦い方をする理由は、多分に重いものを抱えているに違いない。<br />　治療を受けている藍華の方へ視線を向け物思いに耽るが、それはラオの明るい声で中断された。<br />「そんな事無いよ、助かった。あ、自己紹介がまだだったよな。俺はゲフタ・ラオ。ラオでいいよ」<br />　にっかと白い歯を見せながらラオは人懐っこい笑顔で名乗る。<br />「よろしくね、ラオ君。私はサリューナ・グルカ。サリューナでもサリュでも好きに呼んで？」<br />　大輪の花が咲き誇るような笑みとともに、サリューナは名乗る。鈴を転がすような声はとても優しく、ラオの耳をくすぐった。<br />「おう、サリュ。よろしくな」<br />　サリューナのウィンクルムに対する態度と違う事に、ラオは少し面食らったが頷き微笑み返した。<br />「皆一応無事のようだな。遠瀬藍華の治癒が終わればすぐに出発するか。ここの敵に当たるには少し戦力が心もとない」<br />　ケイロンの場を引き締める声と提案に、彼らはお互いの顔を見合わせる。<br />「あの――　先生、実はもう一人……」<br />　ウィンクルムの歯切れの悪い言葉に皆が続いた。<br />「おっさんとはぐれちまったしな。探さないと――」<br />「ウィン達の同行者でデシモテルセロさんって方がドラゴンゾンビと――」<br />　サリューナの言葉にケイロンは眉を顰める。<br />　特異体質だから大丈夫とサリューナ達を先に行かせ、たった一人でドラゴンゾンビと戦うなど無謀。<br />　もしや彼女達を庇うために、その男は命を落としたのでは無かろうか。<br />　だが生死の確認をせず、遺跡より撤退する事は憚られた。<br />「では、はぐれたのはその男性一人なのだな？」<br />　ケイロンの再確認に皆は一様に頷いた。<br />「手分けして探したいところだが、分散するのは得策ではないな。固まって行動しよう」<br />　ケイロンの提案に異論を唱える者はいない。<br />　出来るだけ多くの戦力で当たった方が良い――　それほどこの遺跡の害獣達は異質だと、皆感じていたからである。<br /><br /><br /><br />「まだ死ねぬか――」<br />　折角の機会を無邪気で残酷な主人に台無しにされ、デシモテルセロは酷薄な笑みを浮かべる。<br />　今頃、彼女はその艶やかなぬばたまの髪を指先で弄びながら、華奢な肢体で寝台に寝そべっているに違いない。<br />　黒曜石の瞳を煌めかせ、一瞬退屈を潰せた悦びと、デシモテルセロの苛立ちに笑みを浮かべている姿も容易に想像できた。<br />「余計な事を」<br />　千切れた左腕もすっかり元通りに戻され、藍華達と別れた時の姿のままである。苦々しげに吐き捨て、デシモテルセロは地を踏みしめ歩む。<br />　後は己の望みを叶えてくれそうな、あの人外の少女に再び出会うために。<br /><br /><br /><br /><br /><p align="center"><a href="http://underpneuma.blog60.fc2.com/blog-entry-115.html#jumpx">[ *&nbsp;BACK ]</a>　／　<a href="http://underpneuma.blog60.fc2.com/blog-entry-117.html#jumpy">[ *&nbsp;NEXT ]</a></p> ]]>
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<dc:subject>地沃国『忘却の大都攻略編』</dc:subject>
<dc:date>2009-09-18T20:58:25+09:00</dc:date>
<dc:creator>未熟者同盟</dc:creator>
<dc:publisher>FC2-BLOG</dc:publisher>
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